インド北西部、ラージャスターン州にあるジャイプール。

ピンク色に統一された街並みから「ピンクシティ」と呼ばれるこの街には、マハラジャ時代の宮殿や城塞、そしてインドの歴史と文化を感じさせる建築物が数多く残っています。

インド5日目の旅では、ジャイプール周辺にあるチャンド・バオリの階段井戸を訪れた後、壮大なアンベール城へ。そして、ジャイプールの象徴ともいえる風の宮殿(ハワー・マハル)、最後にジャンタル・マンタル天文台を見て回りました。

華やかな宮殿だけではなく、インドの人々が長い年月をかけて築いてきた水の文化や、王侯貴族の歴史にも触れることができる旅でした。

チャンド・バオリ――地底へ続く巨大な階段井戸

ジャイプールから車で向かったのは、アバネリ村にあるチャンド・バオリ。

「階段井戸」と呼ばれる巨大な井戸です。

チャンド・バオリは9世紀にニクンバ朝の王チャンダによって造られたとされ、約3,500段もの階段が幾何学模様のように整然と並んでいます。もともとは貴重な水を蓄えるためだけでなく、暑さを避ける場所、さらに人々が集まる場所としても利用されていました。

上から階段井戸を覗き込むと、その光景にまず圧倒されます。

無数の階段が左右対称に規則正しく並び、まるで巨大な幾何学模様を地面に描いたようです。

一段一段の階段は決して派手な装飾が施されているわけではありません。しかし、それが何千段も積み重なることで、独特の美しさを生み出しています。

水を確保するという実用的な目的から生まれた建築物が、これほど美しい造形になっていることにも驚かされます。

チャンド・バオリはジャイプールから約88kmの場所にあります。ジャイプール市内の観光地とは少し離れていますが、ジャイプール観光と組み合わせて訪れる価値のある場所です。

アンベール城――丘の上に広がるマハラジャの宮殿

チャンド・バオリを後にして、ジャイプールへ向かいます。

次に訪れたのは、ジャイプールを代表する観光名所の一つ、アンベール城(アンベール宮殿)です。

丘の上に築かれた巨大な城塞は、遠くから眺めてもその存在感に圧倒されます。

アンベール城はジャイプール中心部から約11kmの場所にあり、淡い黄色やピンクの砂岩、白大理石などを使った壮大な宮殿群で構成されています。城内には王の居室や女性たちの居住区、庭園、寺院などがあり、四つの主要な中庭を中心に広がっています。

浴槽です

城内を歩いていると、ここが単なる「城」ではなく、王族が暮らしていた巨大な宮殿だったことが実感できます。

特に印象的なのがシーシュ・マハル(鏡の宮殿)。

壁や天井に無数の小さな鏡が施され、光を受けて輝く華麗な空間になっています。アンベール城を代表する見どころの一つです。

鏡の宮殿

一方で、城壁の外に目を向けると、ラージャスターンの乾いた大地と山々が広がります。

豪華な宮殿の内部と、厳しい自然環境。

その両方を見ることで、かつてこの地を治めた王たちの暮らしが少し身近に感じられました。

風の宮殿――ジャイプールの街を象徴する建物

そしてジャイプール市内へ。

次に訪れたのが、ジャイプール観光では外せない風の宮殿、ハワー・マハルです。

街の中に突然現れる、ピンク色の独特な建物。

蜂の巣を思わせるように、小さな窓が無数に並んでいます。

ハワー・マハルは1799年に建てられた5階建ての建物で、「風の宮殿」という名前の通り、多数の窓やジャローカ(張り出し窓)から風が通り抜ける構造になっています。王族の女性たちが姿を見られることなく、街の様子を見るためにも使われたとされています。

正面から眺めると、それほど大きな建物には見えないかもしれません。

しかし、無数の窓と細かな装飾が作り出すファサード(外観デザイン)は、とても印象的です。

ハワー・マハルの前には道路があり、車やオートリキシャ、バイクなどが行き交っています。

ジャンタル・マンタル天文台――巨大な日時計が刻むインドの天文学

風の宮殿のあと訪れたのがジャンタル・マンタル天文台(Jantar Mantar)です。

ここは普通の天文台とは少し違います。

望遠鏡が並んでいるわけではありません。
広い敷地に、巨大な三角形や半円、階段、壁などの不思議な建造物がいくつも並んでいます。

これらはすべて、太陽や星の位置、時刻などを測定するためにつくられた「天文観測機器」です。

18世紀のインドで、これほど巨大な観測施設が造られていたことに驚かされます。

ジャンタル・マンタルは、18世紀前半にジャイプールの王、サワーイー・ジャイ・シン2世(Jai Singh II)によって建設された天文観測所です。

ジャイ・シン2世は天文学に強い関心を持っていた王で、インド北部のデリー、ジャイプール、ウッジャイン、バラナシなどに天文観測所を建設しました。

その中でもジャイプールのジャンタル・マンタルは、規模・種類ともに最も充実した施設です。現在も多くの観測施設が良好な状態で残されています。

2010年には、ユネスコの世界文化遺産にも登録されました。

ユネスコによれば、ジャンタル・マンタルには約20の主要な固定観測機器があり、肉眼によって天体の位置などを観測するために設計されていました。

ジャンタル・マンタルに入って最初に感じるのは、その独特な景観です。

白や赤みを帯びた巨大な建造物が、広い空間の中に整然と配置されています。

一見すると、現代建築のアート作品のようにも見えます。

しかし、その一つ一つには明確な目的があります。

角度や方向、長さなどが精密に計算され、太陽や星の動きを測定できるように設計されています。

当時は現在のような電子機器やコンピューターはありません。

それにもかかわらず、巨大な建築物そのものを「測定器」にすることで、天体の動きを読み取ろうとしたのです。

サムラート・ヤントラ

ジャンタル・マンタルを代表する施設が、サムラート・ヤントラ(Samrat Yantra)です。

これは巨大な日時計です。

サムラート・ヤントラ

中央にそびえる大きな三角形の壁のような部分が「ノーモン」と呼ばれる影をつくる部分で、その両側に目盛りが刻まれています。

太陽が東から西へ移動すると、それに伴って影も少しずつ移動します。

その影の位置を読み取ることで、時刻を測定することができます。

とにかく大きい。

目の前に立つと、「これが時計なのか」と驚かされます。

ジャンタル・マンタルのサムラート・ヤントラは、世界最大級の日時計として知られ、その目盛りは非常に細かく刻まれています。資料によれば、理論上は2秒単位の時間を読み取れる設計になっています。

12星座を観測する「ラーシヴァラヤ・ヤントラ」

ジャンタル・マンタルには、さらに興味深い観測装置があります。

それがラーシヴァラヤ・ヤントラ(Rasivalaya Yantras)です。

これは12基の観測装置から構成されています。

12基それぞれが黄道十二宮の一つに対応しており、星座に合わせて異なる方向に配置されています。

巨大な日時計とは形が少し違いますが、これも天体の位置を測定するための重要な装置でした。